東京都渋谷のパッケージデザイン・グラフィックデザイン 株式会社T3デザイン

パッケージデザイン会社による年賀状のすゝめ

2019.12.17
社員ブログ

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パッケージデザイン会社による年賀状のすゝめ

こんにちは。アートディレクターのbearです。もう今年も残すところ僅かですね。さて、みなさんは年賀状を毎年つくっていますか?最近ではメールやSNSで済ませる人が多いのではないでしょうか?私は毎年かなりのエネルギーを年賀状に費やしています。例え喪中であろうとデザインは作り続けているそれは、もはやライフワークと言えるかも?今回は、そんな筆者が実作の紹介を交えながら、年賀状のおもしろさについて語らせていただきます。

1. 絵心なくてもOK

私が年賀状に凝り始めたのは、一冊の本との出会いからでした。それがこちら、グラフィックデザイナー奥村昭夫さんの「干支の本」。

奥村さんは、グリコのロゴや、牛乳石鹸のパッケージなども手がけたデザイナーです。この本は奥村さんの実際の年賀状をベースに一冊の本にまとめ直したもので、立体的なペーパーワークが中心となっています。本の中身を紹介すると、この後の筆者実作がしょぼく見え過ぎるので、気になった人はぜひ探してみてください!絵的な良し悪しに左右されないアイデアが沢山です。1番感銘を受けたものをちょっとだけチラリ。


寅年にこのタイガースファンの心を掴むアイデア!!

タイガースは、7回の攻撃の時にこのジェット風船を飛ばすのです。

それまで、グラフィックデザインは、絵が上手じゃないとやれないと思っていたのが、この本を見て絵心がなくても、アイデアで勝負できるんだなと気付かされました。しかも、この本は、ボローニャ国際絵本原画展で入選もしています。絵なしでも絵本まで作れるのか!(注:この本がいわゆる絵的な要素が少ないだけであって、奥村さんはたぶん絵も上手です)

そうして、2003年の未年から私の年賀状作りは始まったのです。

2. 制約を設ける

いざ面白い年賀状作ろう!と意気込んでも、自由過ぎると逆になかなか難しいもの。そんな時はある程度自分なりの制約を設けることをお勧めします。やれる範囲を狭めることでアイデアを集中させることができます。やれる範囲の中で尖らせていく。仕事にも通ずるところがありますね。

私の場合は、

  • 年賀ハガキサイズの長方形であること。
  • 干支をモチーフにすること。
  • 手作りすること。
  • 絵的なグラフィック表現は極力使わないこと。
  • メッセージなどは宛名面側にしっかり書くこと。
  • 干支が一周する12年間同じテーマで続けること。

という制約の中で「年賀状シーズン1」がスタートしました。毎年、干支をいかに絵に頼らずクラフト的に表現するかだけ考えていました。

過去の年賀状
途中、T3デザインに転職してきて仕事としてグラフィックデザインに触れたことが影響し、2年間だけ制約からブレたものも作ったけど、何とか12年間続いた。

3. 思い入れのある5枚

このシリーズは、表現のアイデアを重視したもので、干支に関連することをなるべく新しい手法や素材を使って表現し、受け取った人が理屈抜きにちょっと嬉しいものを目指しました。

3-1. はじめの1枚 (2003年 未年)

ふかふかのヴィベールという紙にウール100%の毛糸で2003を描いたもの。毛糸部分がハガキ全体の約8%。

タグの裏には隠しメッセージ。
タグの裏には隠しメッセージ。

この年賀状はとても評判が良かったので、この後11年続ける励みになりました。

3-2. お気に入りの1枚 (2005年 酉年)

酉年は、卵で表現。これは、ウェイビーウェイビーという、伸びる紙を使い、実際の卵で型(紙粘土の型)をつくり、ひとつづつ型取ったものです。


この卵、実は中にヒヨコが入っています。穴を開けないと分からないので、たぶん誰も気付いてないけど……

3-3. 一番苦しかった1枚 (2007年 亥年)

亥年ということで、牡丹鍋の牡丹をボタンに置き換え、その周りにイノシシの足跡をフミフミ。


まずボタンに文字をインレタで貼り、ボタンを真ん中に縫いつけて、イノシシの足跡のために作った鉄の板を火であぶり足跡をつけては、年賀ハガキに貼り付けるという作業をひたすら。まさに苦行。その甲斐あってかこの年賀状は小さな年賀状コンペで入選しました。

3-4. 最も攻めた1枚 (2011年 卯年)

卯年→ウサギ→バニーガール→網タイツ?という連想で出来たのがこちら。


網タイツをたくさん買ってきて、ハガキに履かせて、さらに所々破ったら、変態的な年賀状が完成。

3-5. 一番お金がかかった1枚 (2014年 午年)

午年なので馬革が良いなと思い、最高級革のコードバンに西暦を焼印するだけのシンプルなデザインにしました。すごく味わいがあり、しかも長く使い込めば使い込むほど風合いが出てきます!年賀状なので誰も使い込まないけど。


しかし、まず革が高い!さらに想像以上にずっしりしていて重いので、送るときの追加料金が高い!これらが社会人になる前からスタートした、長きに渡る「年賀状シーズン1 めんどくさいシリーズ」の一部でした。

4. 2018年~現在 息子と一緒に作成

12年間のめんどくさいシリーズが終了して、もうこれからは簡単なものにしようと思っていたところ、息子が誕生。今度は「子供と一緒に年賀状つくったらめっちゃ面白いのできそう!」と思ってしまったのです。

そして、

  • 息子と一緒につくること。
  • 息子の成長に合わせて出来ることをデザインに盛り込むこと。
  • 干支をモチーフにすること。

を制約として「年賀状シーズン2」がスタートしたのです。

4-1. 2018 息子0歳~塗る~

息子が色を選ぶ。

この10色に決定。

息子が塗る。

すぐ飽きちゃうので筆に工夫して、

また、ひたすら塗る。

お父さん(私)が「犬」のカタチに切って完成。

4-2. 2019 息子1歳~破る~


お母さんがイノシシの毛をイメージした柄を書いたものをプリント。破りやすいように縁だけ破っておく。

息子が破る。

ひたすら破る。

たくさん破ったら、

お父さんが貼って完成

これはイノシシなのです。

このように、自分を取り巻く環境の変化などを年賀状の制約に加えて楽しむと、オリジナリティのあるものができたりします。私の場合は、今までの1人ストイックに作っていたものから、ファミリーの温かさや楽しさみたいなものが、表現に出てきたかなと思っています。

5. 年賀状のすヽめ

私は何かを職人のように地道にものを作るのが好きなので、このような年賀状を作ってきましたが、例えば本が好きな人なら、好きな本の一節をコピーして貼り付けて年賀状にしてもいいですし、ただ好きな色を一面に塗って、毎年違う色を年賀状にしてもよし、年賀状はこんなものという決めつけをせずに、1年に一回くらい自分が好きなように自由にアウトプットしてみるのも良いのではないでしょうか。

自分が楽しんだものは、受け取った人も楽しい気持ちにするものですからね。あっ、これも仕事に通ずるものあるかもですね。ということで、弊社と一緒に楽しんで何かを作りあげたい方、面白いお仕事お待ちしてます!