
こんにちは、広報部長です。
皆さん「2025年問題」はご存じですか?
2025年問題とは、2025年以降に日本が超高齢化社会を迎えることで発生するさまざまな問題の総称です。国民の5人に1人が75歳以上の後期高齢者となり、雇用や医療、福祉などの分野で深刻な影響を及ぼすことが懸念されています。
2025年問題による、具体的な社会への影響には、人材不足の深刻化、医療費・介護費の増大、現役世代の社会保険料負担の増大、事業継承問題、 医療体制維持の困難化などが挙げられます。
この2025年問題への対策として、医療や介護の体制拡大などが急務となっています。
さて、2025年。いよいよ2025年問題の渦中です。われわれパッケージデザイン業界ができることって何でしょう? それはやっぱり「デザインすること」に尽きるのではないでしょうか。
わかりやすいパッケージにすること、使いやすいパッケージにすること、それは高齢者のみならずもっと幅広い人に届く、手に取ってもらえるものになるんだと思います。
1. 高齢者向けパッケージデザイン10選
1-1. ツムラの漢方薬
誰もが一度はお世話になったことがあるのではないでしょうか。ツムラの漢方薬は、100種類以上の漢方製剤を番号と色で識別でき、医療従事者と患者さんの双方にとって、わかりやすい、間違えにくい、使いやすいパッケージ。誤認の防止と作業負荷を軽減。安心・安全に貢献しています。
長方形のパッケージは病院などで処方されるもの。白い外箱とスティック状のものが一般に販売されているものです。どちらもこれでもかというくらいはっきりと大きく数字が示されていますね。
1-2.「ヒートショック」啓発ツール

こういった啓発ツールやポスターのデザインは、より一層視認性の高さや分かりやすさが求められます。こちらはT3デザインが担当した、ヒートショック予防の啓発ツールです。
ヒートショックとは、寒い部屋から暖かい部屋への移動など、温度の急な変化が体に与えるショックのことです。冬場に危険が多いヒートショックの認知度向上のため、ヒートショックとはどんなものでどう防ぐのかを、わかりやすく伝えるポスターとパンフレットをデザインしました。ヒートショックというネガティブなワードを親しみやすくさせるというテーマの下、イラストや色で温かさを表現しています。また、幅広い年代の人が手に取りやすいようにと、お風呂好きな動物をモチーフとしたキャラクターが生まれました。みんなで仲良くルールを守って楽しく入ることをイメージしています。
1-3. 熱中症ゼロへ 販促物
熱中症をなくそうというプロジェクト、「熱中症ゼロへ」における2017年版、キービジュアル・販促物です。T3デザインが担当しました。ポスターに加えて、子供が楽しみながら読める、ぬり絵になっているリーフレットや、高齢の方を対象にした、認知しやすい「色・文字・レイアウト」を考えたリーフレット等を作成しました。
1-4. 三井食品 「鍋つゆ」シリーズ
中に何が入っているのか、同シリーズ商品とどこが違うのか、それをはっきりと示すことも大切です。認識しやすい色、内容が分かりやすい写真(そして食品には欠かせないシズル!)、大きな文字。必要な要素がパーフェクトに揃っているこちらの商品は、T3デザインが担当しました◎
厳選された味のエキスを使用した濃縮タイプの鍋つゆのパッケージデザインです。味で選びたくなる商品にしたいというオーダーに対し、ネーミング「極みの~」と、コピー「鶏の旨味と~」を盛り込むシズルの表現を提案。自宅などで囲む鍋の、雰囲気を高める事がパッケージの狙いです。
1-5. ファンケル サプリメントシリーズ
ファンケルのサプリメントシリーズは「どんな効果が得られるのか」がわかる商品名が特徴。フォントもすっきりと見やすいものが採用されていて、たくさんのサプリメントが並ぶドラッグストアなどでもよく目立つところがうれしいですよね。
また、年代別の杖合わせシリーズが展開されているのも素晴らしいアイデア。自分に合ったものはどれなのか、直感的にわかる仕掛けになっています。広報部長が個人的にすごいなと思ったが「ブルーベリー ミエルネ」。ブルーベリーが目にいい、というある程度周知されている情報を取り入れつつ、スマホ、大きな目、「ミエルネ」というネーミング、どこからどう見ても目にいいサプリメントじゃないですか。すごいです。
1-6. DHC サプリメントシリーズ
全国のコンビニからドラッグストアまで幅広い場所で売られているDHCのサプリメント。DHCのロゴ、栄養素の内容、どんな効果があるのか、何日分入っているのかが絶妙にわかりやすく示されています。
効果がイラストにされているのも、好感度が高いですね。DHCのサプリメントシリーズは、ターゲットによってデザインが細かく調整されており、まさに「届きやすい」デザインになっているなと感じます。
1-7. サツドラ公式アプリ
北海道圏で展開するドラッグストアチェーン「サツドラ」の公式アプリです。
「幅広い世代のお買い物をより便利に」というコンセプトを掲げ、シンプルで使いやすい設計を追求しています。また、クーポンやポイントカードなどの基本的な機能に加えて、調剤薬局でお薬を簡単に受け取れる機能や、歩いて店舗を訪れることでポイントが貯まる機能などを提供し、健康で明るい便利な社会の実現に貢献しています。
特徴的なブルーとホワイトのコントラストで視認性が高く、またクーポンのデザインなども、一番見てほしい倍数の部分が強調されるよう考えられています。必要な情報が浮かび上がるように画面が整理されていて、幅広い世代に優しいデザインだなと思います。
1-8. ニッスイの冷凍食品
ニッスイの冷凍食品は、幅広い世代から愛されている老舗シリーズ。特に「今日のおかず」のパッケージはかなり考えられて作られているなという印象です。
商品名の中でも強調したい部分のフォントを一際大きく、はっきりとした色使いで、シズルはマストで、という基本はもちろん、もうひとつ先の「おいしさ」を示す表現がさりげなく印象に残るように入れ込まれています。
1-9. ニッスイ EPAlife 機能性表示食品
こちらもニッスイの商品です。機能性表示食品というだけあって「どんな効果があるのか」という一番大切な情報をばっちり表示。自分に必要なものかどうかがよくわかるデザインです。
「記憶力」「維持」「中性脂肪」「下げる」など、求められているワードの視認性を上げ、細かい文字の部分をキャッチできなくても、一番大切なところはわかるよう設計されています。
1-10. Cook Do 醤 チューブ
おなじみ「CookDo」の調味料チューブは、一見して従来と変わらない普通のチューブですが、実は高齢者や子どもが使うことを考えられています。
はっきりとしたカラーリングとわかりやすいフォント、というのはもちろんですが、胴体部分の素材を、従来のラミネートチューブ容器よりも薄いフィルムに変更。また、注出口も、粘度の高い中身の特性に合わせて改良されていて、軽い力で絞りやすく、握力の弱い人間でも最後まで使い切りやすい構造になっているんです。また、キャップを閉める際に「カチッ」と音が鳴る構造になっていて、「閉じたぞ」ということをはっきり確認できるようにもなっています。
見た目はもちろん、構造や素材も考えることで、より幅広い世代に向けて「使いやすい」商品になるんですね。
2.高齢者をターゲットとしたパッケージデザインで気をつけたいこと
視認性を重視
人間は高齢になると視力が落ちる傾向にあるので、文字そのものの見やすさが大切になってきます。
フォントサイズは一般的なパッケージよりも大きく、12pt~16pt以上を目安にするのが良いそう。また、シンプルなサンセリフ体(ゴシック体など)を使うと、読みやすさがアップします。
また、色の選び方も重要です。加齢によって視力が落ちますが、実は同時に色覚も弱まっていくからです。例えば黒地に白文字、濃紺に黄色など、背景色と文字色のコントラストを強めて認識しやすくすると良いですね。これは、高齢者はもちろん、色覚に特性を持つ人にも有効です。
そのほか、商品の特徴や使用方法を視覚的に伝えるため、簡潔なアイコンやイラストを使うと、より分かりやすくなります。
操作性を向上
指先の力が弱くても開けやすい設計や、ねじりやすく、滑り止め加工が施されているキャップなどを採用することで、少しの工夫でより幅広い世代の人が違和感なく使えるプロダクトになります。使用後に簡単に閉じられるジッパーやフタなど利便性の高い設計を工夫することや、商品そのものの重量を抑える工夫、片手で持ちやすい形状やサイズを考慮することなども必要です。
ユーザー体験をサポート
使用方法や保存方法をイラストや図解で簡単に説明するのもいいですね。視覚に頼らないサポートとして、音声案内が利用できるQRコードを載せるという取り組みをしている企業もあります。また、今回ご紹介したサプリメントのように、「低カロリー」「糖質控えめ」「減塩」など、ターゲットが重視するポイントを大きく表示するのも有効です。特に健康食品などの商品では、機能性を一目で伝える表現が求められます。
高齢者向けのデザインはユニバーサルデザイン
高齢者を意識したデザインは、言い方を変えれば「誰もが簡単に使えるよう設計されたデザイン」です。高齢者が見やすいものは、誰でも見やすいですし、高齢者がアクセスしやすい、分かりやすい情報は、誰もが手が届く情報であるということです。
直接手に取るプロダクトはもちろん、アプリのような情報ツールにも、これからどんどんこの視点が求められるようになっていくでしょう。