こんにちは。食品デザインチームFooDelicious のあおやまです。夏が終わり、だんだん涼しく過ごしやすくなってきましたね。私事ですが先日猫が誕生日を迎えて2歳になりました。
さて、今回は食品チームらしい話をしようということで、「シズル」について書こうと思います。
食品パッケージと切っても切り離せないものがシズル写真。T3デザインでは、食品パッケージデザインに入れ込むために食品の撮影をたくさん行っています。料理やおつまみ、飴やグミにはじまるお菓子などの撮影って難しいですよね。写真では匂いや温度が無いので、その料理の魅力を写真に収めるのは意外と大変です。食感や温度感を伝えるために撮影する料理そのものに手を加えたり、撮影方法や撮影後にふんだんに加工してはじめて、肉眼で感じる「美味しそう」な見た目に到達したりします。
T3デザインでは、もちろんスタジオやカメラマン、場合によってはフードスタイリストを手配し撮影することがほとんどですが、デザイン提案時のアタリ画像や、グミ、飴などの小さなお菓子は社内で撮影をしています。
このブログでは、そんな仕事の中で培った料理やお菓子を美味しそうに撮影する方法を少し紹介しようと思います。
1. シズルとはおいしそうに感じる表現のこと。
《原義は、油で揚げたり、熱した鉄板に水を落としたときに、じゅうじゅう音を立てるさまの意》広告表現で、消費者の五感に訴えて購買意欲をそそる手法。また、購買意欲。「都市生活者のシズル」「シズル感」goo しずるの意味 - goo国語辞書
「シズル」は元々はステーキが焼ける時のジュージューという擬音語という意味ですが、一般的には"ヨダレが垂れるような、より美味しそうに感じる表現"のことを指します。例えば、食欲のそそるようなステーキ、瑞々しく熟れた果物、新鮮味あふれる刺身などの写真や動画は、食欲を刺激する表現であればあるほど「シズル感のある」写真になります。
そして、先程から使っている「アタリ画像」とは、デザイン等で仮で配置する素材のこと。後から撮影したり購入したりした「本画像」に差し替えはするものの、シズルの画像はデザインの雰囲気を大きく左右する部分なので、アタリ画像の撮影にもしっかり力を入れています。
それでは、T3デザインで行ったシズル撮影の一部をリアルに公開しながら撮影のコツを紹介していきます!
2. ウェットな食品を美味しそうに撮る!
まず紹介するのはウェットな料理の撮影方法。皿盛りで美味しそうな貝のおつまみの案件を参考にお話ししていきます。
今回は提案用のアタリ画像の撮影です。アタリで撮影するものは、提案前にサンプルとしていただいたものだったり、既に発売している商品から似たものを探して使います。基本的にカメラは、デジタル一眼レフを使用します。
iPhoneのカメラも性能が良いので、グミなどの小さなものはiPhoneで撮ることも。アタリ画像の撮影であれば、foodie 等のアプリを使ったほうが早くて綺麗な時もあります。今回はアプリで撮っていきます。
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2-1. 撮影準備はスピーディーに。
ウェットな食べ物は時間が経つと変色してしまうのでスピード勝負です。特に今回は貝なので、乾いてしまうと瑞々しさが無くなってしまいます。
袋から大皿にザッと出し、形のいいものを選抜。余裕があれば予備は未開封のままとっておくと後の心配がなくなります。
2-2. 料理撮影は光(ライティング)が命!
ライティングは料理を美味しく見せる一番のポイントです。
撮影場所は、なるべく明るく、自然光の入る窓際がベストです!室内のライトだと固い印象になりがちですが、自然光が当たると柔らかく温かい雰囲気の写真が撮れるのです。
ただ、光が強くて手前に暗く影ができてしまう場合は、レフ板(白い紙でもOK)を使いましょう。
2-3. ツヤちょい足しでおいしさアップ。
「シズル感」を感じさせる演出の一つに「ツヤ」があります。
とろっとしたソースの光沢だったり、新鮮なトマトのハリを表現するといった際にもツヤの演出が大切になってきます。今回のようにウェットな料理では、より分かりやすくツヤを出すためのちょい足しに油を塗ります。そうすることでより美味しそうに見えてきます。
さて、このままでは流石にびしゃびしゃすぎるので、余分な油を拭き取り、完成した画像がこちらになります。
つやつやとした質感で、温かみのある色合いで美味しそうに仕上がりました。自然光で撮るときは同じ光でも午後の光ってなんとなく青っぽかったり、思いの外暗く写ったりするので、できるだけ午前中に撮るのがいいかなと思っています!
そして、このアタリ画像を後に撮った本画像と差し替え……美味しそうなおつまみのパッケージができ上りました!実績画像は「酒肴逸品シリーズ」から確認頂けます。パッケージに実際に使われている本画像ほどではなくても、アタリの段階から力を入れて撮影しておくと、差し替えた時のギャップに悩まされることもありません。
3. 一粒に思いを込めて。加工で仕上げるグミの撮影
次は一粒が小さなお菓子の撮影方法についてです。T3デザインでは、グミや飴等のパッケージデザインのご依頼が多く、よくそういった小さい粒(グミや飴など)を撮影することがあります。実はこの手の画像はゴリゴリのレタッチありきの撮影になることが多い為、本番用の画像も社内で撮影することが多いです。(もちろん小粒をスタジオでカメラ撮影する場合もありますよ!)
「この一粒に命をかける者たちがいた……」。まさしくそんなモノローグが流れるほど、小粒の加工って手間暇がかかります。小さいからと、侮るなかれ……。
ということで、実際に私が行った過去の撮影を例に紹介します。2層構造の断面が特徴的な、グミのオーダー。ゴリゴリの加工に力を入れた、思い出が詰まった実績です。
3-1. 綺麗な断面は冷やして切る!
このグミは断面の質感が重要なので、まずはグミをカットして、断面の撮影を行いました。切断面が潰れないように慎重に切ります。常温だと柔らかすぎて包丁を入れた時に潰れてしまったりするので、そんな時は冷凍庫で少し冷やしてから切るのがポイントです。
3-2. パウダー感を出すためにコントラストを強めに
グミ表面のパウダー感を出すために、パウダーの凹凸を、コントラストを強めにして撮ります。このグミはパウダーの粒感が重要なので、粉のつき方が綺麗な面を中心に撮影しました。
写真を選抜し、一粒のグミ画像を作るために10枚ぐらいを切り貼りしながら加工していきます。できあがった画像がこちら。
表面にはパウダーがまぶしてあり、全体のシルエットはゴツゴツした岩石型に。ソフトでプルンとした外側の層と、みっちりハードな食感の内側の層が表現できました。
このグミの写真が載ったパッケージがこちら!「カンロ ザ・ストロング 濃厚ソーダ味」です。その名のとおり、ザ・ストロング!なインパクトあるデザインです。
実際にパッケージに載るのは本当に小さな一粒ですが、中身が見えない商品にとってはここが唯一中身の情報を伝える大事なポイントです!
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4. うるうるプルプルを演出する
最後に、うるうる~プルプル~な食品の撮影方法です。紹介する過去実績の撮影はうるおいたっぷりのど飴に使用するマスカットのシズルです。「マスカットを覆うような粘度のある液体を滴らせる」というオーダー。
いつもならレンポジ(※)を複数合成したりするのですが、なかなかうまくいかず……。撮ったほうが早いぞ!となり、こちらは急ぎの案件だったためカメラマンは手配せず、社内で撮影しました。
4-1. 表面を水飴でコーティング
単純なフルーツの瑞々しさであれば表面に水滴を付けたりするのですが、うるうるプルプルのものってなんでしょう?果物を覆うほどの粘土があり、かつ透明で、プルプルキラキラしたもの……
水飴です!
水飴をマスカットにぶっかけます。
素材として使う用に、一粒ずつの単体カットも撮っておきます。撮影が終わった後は後輩の手がビタビタになりました。
4-2. 最後はフォトショップで!
撮影した画像ををフォトショップでなんやかんや加工を重ねます。トーンカーブをいじり、彩度を上げ、影や光を描き足し、レンポジのマスカットも部分的に合成し……ゴリゴリに加工するとこうなります!
めちゃくちゃとろっとしました。マスカットからうるおい成分が染み出してきているような画像になりました。最終的にはこれをパッケージに当て込み、完成になります。
結局加工なの!?というツッコミが聞こえてきそうですが…笑
こちらはかなり荒技を使ったので、実際はもっとスマートな方法があるのかもしれません!
5. シズルって奥が深い!
いかがでしたでしょうか。
商品用の画像って実はいろいろな工夫がされているんです!もちろん決まったやり方があるわけではないので、毎回その食品を美味しく見せるためにあれこれ考えています。プロのような加工はできなくても、ちょっと手間をかけるだけて美味しそうに見せることができます。
今回は料理写真を撮影するのとは少し違う、どちらかというとデザイン素材として使う為の食品撮影テクニックをご紹介しましたが、ライティングなどは汎用性が高いのでうまく取り入れればいつものインスタ写真も”映え”るようになると思いますよ~。食品の撮影は、自然光との相性が良いので撮る時間帯や場所、角度などを意識するだけでも効果があると思います。
美味しいシズル感のあるフードの撮影には、実は色々なギミックが詰まっていると思うと楽しくないですか? ぜひT3デザインの特集サイト「FooDelicious 」で、食欲をそそるシズル画像を使った食品パッケージデザイン実績をチェックしてみてください~!それでは読んでいただきありがとうございました!
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