友達と買い物に行くと、寄り道が多すぎて呆れられちゃう、かわしです。もともとウィンドウショッピングが好きだったのが、T3デザインに就職してから「市場調査」という免罪符により、さらに買い物の時間が長くなりました。だって気になっちゃうんだもの!特に私が注目してみるのは、ロゴやタイポグラフィ。 世の中には、名前の数だけロゴタイポがある…… と言っても過言ではないくらい。会社にもブランドにも、商品一つ一つにもロゴはあるもの。シンプルに見えるロゴにだって、そこには深〜〜〜いこだわりがあるのです。じゃあそのこだわりって、何ですか?って気になってきましたか?いやいや、そんな簡単には教えられない....え?ちょっとくらい教えても大丈夫って、いいんですか社長!?
……ということで社長OKと、さらにはとても寛大な4社のクライアント様方からも、ブログ掲載のOKをいただけました。T3デザイナーがさまざまなオーダーからどのようにしてロゴタイポのデザインを生み出したのか。4つの事例とそれぞれの担当デザイナーから、貴重な制作秘話の一部をご紹介します。
1. 試行錯誤の末にたどり着いた偶発のデザイン【萬有栄養株式会社様/燻味塩】
こんにちは。アートディレクターのbearです。私は前のブログ(できたよ、T3FONT。(商用利用可))でも書いたように、文字が好きなので文字メインで構成したデザインが割と多くあります。今回ご紹介するのは、萬有栄養株式会社様 の「燻味塩」。こちらは発売開始から35年以上の歴史ある商品のリニューアルデザインでした。どんな風にデザインが完成したのか、制作秘話を初公開!
リニューアル前のデザインはこちら イメージ
燻味塩は何度かデザインをリニューアルしており、上の画像も発売当初から2回程のリニューアルを経たもの。レトロな雰囲気があって割と良い感じです。このパッケージをパッと見て感じたことは、3つの味が色分けされていて分かりやすいこと。ただし商品名である「燻味塩」よりも、英語が大きく目立ってしまっていることでした。
そして今回のリニューアルは、袋の仕様をチャック式に変えることと、デザインを刷新すること。デザインの方向性についてはある程度任せていただきました。
デザインのポイント
まず、「燻味塩」という名前だけでどんな塩かは十分想像できるので、商品名が一番目を引くようにしたこと、3つの味の違いを色で分かりやすく伝えることは踏襲しつつも、色味を変更。また、他の訴求情報は裏面に移動しました。色や裏面にも結構こだわりがありますが、今回は商品名の文字について説明しますね。
偶発のデザイン イメージ
まず、①「燻味塩」を打ち込んでみました。今回は、この商品名を記号的に見せたかったため、もっと単純化が必要。②文字を構成するパーツを限定し、そのパーツの組み合わせだけでなんとか「燻味塩」と読める文字を目指すも、何か垢抜けないし、まだ複雑だなと試行錯誤しているとき、事件は起こりました。ロゴを選択した状態で、塗りと線を間違えて反転してしまったのです。(線だけの部分はうっすら極細の線のようになり、線で囲まれた部分は塗りつぶされた)「やばっ!」と思った直後、なんということでしょう。そこには、特徴的かつ、シンプルで、料理を燻製風味にする道具的なイメージも表現された、ロゴが完成していました。これぞ試行錯誤の末にたどり着く、偶発のデザインですね。
最終デザインはこちら。
ちゃんとルビもふっていますが、なくても何となく読めますよね?
タイポグラフィ年鑑2021に入選 イメージ
こちらのデザインは、うれしいことに、日本タイポグラフィ年鑑2021の「ロゴタイプ・シンボルマーク部門&パッケージ部門」の両部門で入選することができました。とはいえ、商品が多くの人に知ってもらえて、たくさん売れることが一番大切なので、萬有栄養株式会社の燻味塩 をどうぞよろしくお願いします!
2. 老若男女、国境を越えて【リケンテクノス株式会社様/リケガード®️】
T3デザインのにわかゲーマーShowGです。お仕事とゲームで毎日が忙しいので、しれ〜っとブログの存在からフェードアウトしていたのですが……ついに隠れていたことが天の声にバレてしまいました。またまた仕事の内容を紹介しろとお達しがきた為(※1)、これまたちょこっとマジメにお仕事について紹介します。(パ、パワハラだ……)
さて、今回はリケンテクノス株式会社 様が展開している「リケガード®️」という抗菌・抗ウイルス機能製品のブランドロゴの制作に携わりましたのでご紹介します。
リケガード®️とは?
リケガード®️とは冒頭に述べたとおり、抗菌・抗ウイルス機能を持ったコンパウンド(プラスチック素材)製品のブランドシリーズです。ドアノブや手すり、エレベーターのボタンなど人が何気なく触れる場所に使用することで、清潔さを保ちつつ、ウイルス感染の予防に役立ちます。しかもSIAAという抗菌・抗ウイルス専門の検査機関お墨付きの認定を受けた超優秀アイテムなのです!ここではざっくりしたことしか説明できないので、ウイルス対策に「リケガード®️気になるぅ〜」と思った方へ!もっと「ほぉ〜」っとなる詳細サイトのリンク を貼っておきますね!
役割を視覚化
なぜかリケンテクノス様の営業のようになってしまいましたね・・・気を取り直して本題に戻ります。リケガード®︎は菌やウイルスのような視認できない微生物から、これまた透明フィルムや製品の機能として存在しているため「視認しづらいモノ」で人を守るという商品です。ライフスタイルの邪魔をせず、リスクから守ってくれる存在だと商品を捉えました。そんな配慮と防御により、大きく生活を変化させずともユーザーが清潔で安心して過ごせるというメッセージを持ったロゴで表現しています。
- 特に一般のお客様にお届けすることの多いフィルムタイプが広く認知されやすいかと思い、フィルムをモチーフにデザインを起こしています。透明なフィルムであることを表現するために縁の存在感だけでシンボル化しています。
- フィルムの存在感だけでなく、屋根のように外敵から内部を守る印象もつくっています。
- 青色や「+」がメディカルな清潔感をつくり、誠実な商品価値を表現しています。
- シンプルで読みやすく、世代間差が出ないよう配慮しています。
このご時勢をみても、某ウイルスとの付き合い方は年齢や性別を問いません。そのため、どんな人でもちゃんと商品名が読めるように、そして人を選ばないように、デザインしています。
世界にも届ける
リケンテクノス様は国内外問わず、製品を販売提供しています。リケガード®️もそのひとつ。世界中の人々にもリケガード®️の存在を知ってもらい、生活に役立てて欲しい。そんな想いから海外版のロゴも作成しました。
何度か海外用の商品デザインに携わりましたが、日本人と海外の方の感性は全く違います。 日本人がクールと思っている欧文書体は海外だとポップやレトロと感じられ、またその逆もあります。そのため、今回はあらゆる国でも使用されることを想定して、極力クセのないシンプルな書体を作成しました。日本語ロゴと同じく、どんな人にも分け隔てなくロゴの温度感が伝わるよう配慮しました。
最後にリケガード®️はどこに売ってるの?と思っている方へ。ソフトシートはドラッグストアでも販売してるので気になる方は是非お近くの店舗で探し見てください!(ちなみに僕は近所のマツキヨで見つけました。)
3.遊び心が隠れている【株式会社ハウスオブローゼ様/株式会社ビーハニーワークス様/夏場しのぎ・夏肌打水】
デザイナーの斉京です。私がご紹介するのは 株式会社ハウスオブローゼ様 / 株式会社ビーハニーワークス様 から発売された「夏肌打水」「夏場しのぎ」です。夏肌打水は、夏の日焼けで乾燥したときに、お化粧直しのときに、リフレッシュしたいときに、お肌にうるおいを与えるミスト状の全身用化粧水です。今回はこちらの夏肌打水のデザインができるまでを少しだけお見せしちゃいます。
キャッチーなネーミングを生かしたい!
クライアント様からはじめに「夏肌打水」のパッケージデザインのご依頼をいただいた際、第一印象はインパクトのある名前だなと思いました。打ち水とは、道や庭先などに水をまいて夏の暑さを和らげること。それを肌に使うとは!言葉の響きだけでも涼しげで夏を連想させてくれます。
そんなキャッチーなネーミングを生かすために、和モダンの雰囲気を取り入れたデザインに仕上げました。すっきりとしたモヒートの香りで、夏らしく爽やかな商品です。全身用ジェル状美容液「夏場しのぎ」のリニューアル品もシリーズ感を揃えてデザインしました。
ロゴに隠れた遊び心 イメージ
和モダンを意識したデザインに、ロゴはインパクトと共に少し遊び心を取り入れました。それではここで、夏肌打水のロゴができるまでをご紹介〜。
まずはベースとなるフォントを選びます。今回は少し動きのある軽やかなフォント「はせミン」で夏らしさをイメージしました。次にパーツを追加していきます。配合成分のハチミツ、ローヤルゼリーエキスの表現として、蜂の巣を連想する六角形を「夏」の文字に組み合わせました。さらにデザインでハチのアイコンを入れることでワンポイントに。最後の「打水」は流れるラインを意識して涼しげな印象に仕上げました。
祝・書籍掲載!
夏肌打水・夏場しのぎが発売されてからしばらく経った初夏のある日、文字のデザインの書籍に掲載のお誘いが!
様々なジャンルのタイトルやロゴデザインが並ぶ中、パッケージデザインの項目で「夏肌打水」「夏場しのぎ」を紹介いただきました。ありがとうございます! こうして書籍としてデザインが残るのはデザイナーしてとても光栄でした。他のページもどれも見応えのある内容で眺めているだけでも勉強になります。見かけた際は是非に!
4. 強弱をつけて独自性を【タカナシ乳業株式会社様/ふぉわっぱ とまらない!クリームを食べてるようなヨーグルト】
こんにちは!社会人6年目デザイナーの小花です。ちなみに...読み方はショウファーと読みます。中国語で“花ちゃん”という意味なんです。(とある中国クライアント様がつけてくれました)今回のブログの締めくくりには、タカナシ乳業様から生まれた不思議なヨーグルトの知られざる物語をご紹介します!
謎深いヨーグルトが、またもや誕生...!?
当初、ふぉわっぱのデザインご依頼を受けた際に、以前弊社でデザインしたねっとろ〜りとは違うパッケージデザインになる方向性もあったのですが、見た目のインパクト、中身の訴求、表現の面白さからねっとろ~りとはまた違った食感ヨーグルトとしてシリーズ商品にすることに決まりました。
ふぉわっぱのコンセプトは、「ぐるぐる混ぜて ふぉわっとした食感 ぱっと溶けていくらでも食べられる まるでクリームを食べているようなヨーグルト」。これをビジュアル化してほしいというご要望。ロゴでももちろんこの内容を表現したいなぁ・・・さぁどうしよう!
オノマトペをネーミングに見せる
本当は、「ふぉわっぱ とまらない!クリームを食べてるようなヨーグルト」までが正式な商品名。それを「ふぉわっぱ」というオノマトペ的な部分だけあえて目立つようなロゴを作りました。その後はクセのない書体で読みやすくサラッと添えるような仕立てに。ふぉわっぱのロゴと、それ以降の商品名は、側面では切り離してレイアウトしても良いことに。
ガイドラインを設定して強弱をつける
目新しい商品がいつも並ぶ売り場でも独自性が出せるように、パッケージ全体はもちろん、ロゴでもなんとか商品特徴を伝えようと考えました。実際に商品を食べさせていただいた時の印象・気持ちを何度も思い出し、「読みやすく、親しみやすく、でもなんだか変わった印象」を与える絶妙な温度感のタイポグラフィを目指して作りました。例えば、このヨーグルトのふぉわふぉわした質感とくちどけの良さを文字で表現し、①「ふぉわ」の広がり感・やわらかさと、②「っぱ」のキレの良さの緩急を意識しました。
ベースラインとキャップラインは揃え、その中でやわらかく楽しそうな印象を与えられるように崩しています。
ロゴをまじまじと見てくれる人がどれくらいいるかといったらきっと少ないのでしょうが、パッと見たときに多くの人がこれらの意図をふんわり感じられるようなデザインにできたら嬉しいですよね。日々研究、日々精進ですね!
5. T3デザインの秘密はまだまだ...…
いかがでしたでしょうか?「パッケージデザイン」と一言で言っても、それに付随する商品ロゴのデザインだけでこんなにもさまざまな考えがあって作られているんです。ポイントを絞って書いてもらっているので、みなさんまだまだ語り足りないとは思いますが...…少しでもロゴ・タイポグラフィの世界の魅力が伝わったのならこのブログは成功です!
さて、私はまた新たなデザインと出会うため、市場調査にいってまいります!それではまた〜!